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第二回 アント・キャピタル・パートナーズ株式会社 松井 香(1/2P)

報道キャスターからプライベートエクイティ投資まで、異色の経歴で活動領域を広げるエグゼクティブに聞く、ワーク・ライフ・バランスと不況を乗り切る意識改革。

アント・キャピタル・パートナーズ株式会社 プライベート・エクイティ投資グループ パートナー 松井香

<プロフィール>
三重県出身。東京女子大学卒業後、TV局報道部キャスターとして活躍。退職後は、様々な活動を通して人脈を広げながら、ベンチャー企業のサポートなどをしつつ、経済~金融関連の勉学に励んだ。ファンド運営会社入社後、MBAを取得。ヴァージンシネマズジャパン(株)(現TOHOシネマズ)COOはじめ数々の経営職を歴任。現在は投資前の調査から投資実行、そして経営陣として経営にも携わり、エグジットまでを一貫して手がける。二児の母。
アント・キャピタル・パートナーズ株式会社
http://www.antcapital.jp/

聞き手:松下 宏(履創 代表取締役)

企業ブランドを高めたいから、リストラありきの投資は行わない。

松下 松井さんはファンド運営会社「アント・キャピタル・パートナーズ」に所属されています。現在、手がけているビジネスの概要をお聞かせいただけますか?

松井 投資会社、ファンドといえば、まずはベンチャー・キャピタル(VC)などを想像されるかと思いますが、私たちはVCも含めいくつものファンドを運用するプライベートエクイティ(PE)投資の専門集団です。企業の株式シェアを取る投資によって、成長の支援、財務内容の改善、インセンティブを含む人事制度改革、企業の透明性やガバナンスの向上、などの施策により、経営に深く関与することで企業価値を高め、のちに企業を売却またはIPOすることで利回りを得る「PEファンド(バイアウトファンド)」のグループに現在属しています。

VCファンドは、基本的な考え方としてハイリスク・ハイリターンですが、バイアウトファンドは、VCに比べればリスクもリターンも低い。これは私個人の考えかもしれませんが、バイアウトファンドは全戦全勝すべきものだと思っています。私の仕事は、投資ではなくリターンを出すことですから。

「全戦全勝。それはすごいことですね。」
「全戦全勝。それはすごいことですね。」

松下 それはすごいことですね。成功案件の継続によって、投資家の信頼を勝ち取ることが重要だ、と。

松井 継続的に投資をするには、関係者全員に納得していただくことが重要です。ビジネスは"Win-Win"の関係を築かないと続きません。そういう意味では、企業の買収・売却が最終目的ではなく、中長期的にその会社が取るべき戦略を考えます。

松下 とはいえ、企業の経営に関与すると、特に企業の売却を行う場合は、業績を上げるためにリストラを行うケースもありますよね?

松井 実は、私が今まで関わった案件では、リストラありきの事業を買って、売却したケースはありません。すでに技術力・ブランドやニッチマーケットのシェアなど、コアの強みを持っている企業に投資するほうが、投資リターンが出やすく、そういう企業を次のステージに向かわせるためにさらに輝かせるのが私の仕事だと考えています。

ただ、正直に申しますと、買収後に会社を去る人もいます。人事制度を整え、目標管理をする段階で、「私たちはこのブランド(強み)を買いました。今後、このブランド(=企業)をより成長させていくために、あなたは何ができますか?」という質問をして、スタッフとはきちんと話し合いをします。

松下 私自身は、大学院で「経営戦略とIT」を専攻していました。話はちょっとズレちゃいますが、「セカンドブランドも、ノーブランドも、経営戦略上のオプションのひとつとして考慮しなくてはならない時がある。企業のおかれた状況によっては、創業以来築いてきたブランドも大切ではあるが利益(=事業継続)を優先させることも考慮すべきではないか?」という討論をしたことがあります。

松井 もちろん、利益は優先します、ただ、次の売却先も短期の利益が欲しいという企業は少なくて中長期的に価値のある企業のニーズが高いと思っています。滅びちゃいけない、失なっちゃいけない、社会的存在意義のあるものをどう存続させるか、これは、アント・キャピタル・パートナーズという会社のカラーでもあると思います。ただ、会社の中で私は、比較的「勝つ」ことにフォーカスしている人間かもしれません(笑)。