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第三回 株式会社インスパイア 成毛眞(2/3P)

ビジネスなんて、しょせんは金儲けに過ぎない!?

松下 それだけ厳しい会社で、社員は辞めなかったんですか? 成毛さんの魅力というか、この人にとことんついていこうと思われるために、経営者として何か意識したことはありますか?

「ビジネスマンなんか、歴史に残るような人は一人もいない」
「ビジネスマンなんか、歴史に残るような人は一人もいない」

成毛 ほとんど辞めなかったのは給料が高いからですよ。それだけ。ストックオプションもあるし。ほかに理由なんてありません。たとえば、絵描きや音楽家、工芸家、家具職人は、一生をかけて仕事をしているじゃないですか。立派な職業ですよ。後世に名を残す方もいるわけです。ビジネスマンなんか、歴史に残るような人は一人もいない。紀伊国屋文左衛門とか・・・あとは角倉了以ぐらいじゃないかな。それも、文人として名を残しているわけで。

ただ、一生かけてがんばってる人が仕事をしないと、芸術が残らないし、医学も科学も発達しない。どうでもいいことをしている人たちは、自分でお金儲けをすればいいんです。その結果として社会が富めばいい。ビジネスマンとしての達成感とか目的とか、おこがましい。そんな生意気なこと言っちゃいけません。たかがビジネスですよ。金儲け以外の何物でもない。

松下 では、会社の経営者とエグゼクティブの関係について聞かせてください。たとえば、マイクロソフトが成功したのは、やはり優秀なエグゼクティブがいたからこそだと思うのですが。

成毛 経営者から見ると、エグゼクティブ層は使い捨てでしょうね、基本的には。ビジネスの世界、特にアメリカなんかはまさにそうです。いかに上司にかわいがられるか。じゃないと、すぐにクビを切られますからね。ぺーぺーはともかく、上司に花束を贈らない部下なんていません。奥さんの誕生日にも花束をもっていきますから。

松下 それはすごいお話ですね。成毛さんの場合、中途採用でエグゼクティブを採用する場合、どういう人材を採用したのか、何を期待したのかについて教えていただけますか?

成毛 絶対忠誠するかどうか、ですね。じゃないと、変化のスピードの速い業種は勝てないんです。面倒くさいじゃないですか。誰かが決めて、そのまま実行して、失敗したらすぐ止めるだけ。それを瞬時にできるようにしなければいけません。

マイクロソフト時代の人事部長は、僕の直接の部下。彼には「お前より優秀な奴を入れろ。お前よりダメな奴を入れたらクビにするぞ」と言ったんです。「好きな奴を入れろ」と指示したら、自分より劣る奴しか入れないんですよ。人間ってどうしても本質的に、部下には抜かれたくないって甘えた考えをもちますからね。そんなことでは会社はどんどん悪くなる。彼は必死で優秀な人材を採用しましたよ。そりゃ、クビがかかっていますから(笑)。

そういう意味では、当時のマイクロソフトは海兵隊みたいな会社でした。若くしてピークを迎えるような人たちはすさまじい勢いで仕事ができる。売っているものも本質的には1つしかない。非常にシンプルなんです。とにかく、複雑なことをしちゃいけない。メーカーとして物を作って売るだけ。自動車のように、何十年もの経験も必要ありません。そう考えると、海兵隊のような組織が最高だったんです。

みんな、ビジネス誌の受け売りで人生決めているだけ

「キャリアプランの前にライフプランが大事」
「キャリアプランの前にライフプランが大事」

松下 エグゼクティブのキャリアについてはどう思われますか? 私は転職希望の個人の登録者の方々から「こういうことにチャレンジしたい」といった相談をよく受けるのですが・・・。ケースによっては、キャリアプランの前にライフプランをもう一度吟味したほうがいいのでは? というアドバイスをすることがあります。

成毛 それはそうですね。みんなね、「英語しゃべれます」「こういう資格を持っています」なんてことばかりアピールしすぎなんです。そんな奴は、すぐ雇ってもらったとしても、2年後に給料が上がる前にクビにされるのがオチですよ。

だからね、よく考えなきゃダメなんです。みんな自分でちゃんとものを考えていないんですよ。ビジネス誌の受け売りで人生決めているから。みんな同じことを言っているじゃないですか、何百万人も。金を稼ぐための方法論も戦略ももっていない。答えははっきりしているんですよ。「一人だけ違えばいい」。これだけなんです。

松下 それが、成毛さんが成功を収めた一番のポイントだったのでしょうか?

成毛 生まれつき変わったことをしたい人生。幼稚園のころからですけどね。まあ、人と違うことをしないと難しいと思いますよ、これからずっと生きていくのは。意図的に変わらないとダメ。

松下 意図的にですか。一人だけ違うことをするというのは、演じればいいんですか? それとも演じちゃいけない?

成毛 演じるんです。人と同じことを言いそうになったら言わない。何でもいいから反対を言う。「努力が大切だ」と言ったら、「努力はいらない」って言う。だから、もし松下さんがある答えを期待して質問してくると、僕は逆の答えを言っているんです。きっと、あらゆることに対して逆を言っているんだと思う。

とにかく、人から言われたことの逆さま。全部否定すればいいってイメージなんですよ。本当に嫌味なオヤジですよね(笑)。いまのうちはオヤジで済むかもしれないけど、70ぐらいになると嫌ですよね。小言爺になって、あらゆることに全部逆切れする。ただね、逆を言うから見えてくることが必ずあるんですよ。そして、それが正解なんです、きっと。